「連続増配○年」のニュースが続いたここ2週間
2026年5月の前半は、連続増配20年超のニュースが立て続けに発表された2週間でした。私が観測した範囲では以下のとおりです。
- 5月9日 高速(7504):23期連続増配、2027年3月期は前期比+4円の年間120円、23年で配当12倍
- 5月13日 リンナイ(5947):25期連続増配、2027年3月期は前期比+6円の年間106円、25年で配当17倍
- 5月13日 芙蓉総合リース(8424):22期連続増配、2027年3月期は前期比+14円の年間172円、22年で配当20倍
- 5月15日 栗田工業(6370):23期連続増配、2027年3月期は前期比+22円の年間134円、23年で配当8.3倍
いずれも2027年3月期の配当予想に基づく数字で、各社のIR発表として報じられたものです。連続して20年以上にわたって増配し続けるというのは、リーマンショック・コロナショック・直近のインフレ局面まで含めて還元姿勢を一度も崩していないことを意味します。日本株でこの基準を満たす銘柄は限られており、観察に値する事実なのは間違いありません。
それでも私は、このニュースを見たあと、4銘柄のどれにも買いを入れていません。すべて「観察リスト」に置いて様子見にしました。なぜそうしたか。連続増配年数は「観察に値する銘柄である」というチケットであって、「今すぐ買う理由」ではないと考えているからです。この記事では、私が連続増配シニア銘柄をどんな観察軸で見ているか、4銘柄の実数値を交えて整理します。
※ 個別銘柄の数値は記事執筆時点のIR発表およびIRバンクの公開データに基づくものであり、特定銘柄の取引を推奨するものではありません。
私の観察軸 — 「年数」より先に見る4つの数字
連続増配年数だけを見て買うと、痛い目に遭うことがあります。理由は単純で、株価が高い局面、つまり利回りが低い局面で買ってしまうと、その後20年保有しても買い値の利回りが10年20年のインカムリターンを決めてしまうからです。
私は高配当株を「タイミング投資」として扱っています。同じ銘柄でも、利回り3%で買うのと利回り4%で買うのとでは、20年で受け取る配当総額は1.3倍以上の差になります。仮に増配率が同じだったとしてもです。だからこそ、ドルコスト平均法で毎月決まった額を機械的に買うようなスタイルは、高配当株では合理的ではないと私は考えています。インデックスや成長株向きの手法を、性格の違う高配当株に持ち込むべきではありません。
このスタンスに立ったうえで、私は連続増配シニア銘柄を見るとき「年数」より先に次の4つを見ます。
買い値の利回り — 10年20年のインカムを決める数字
最初に見るのは現在の配当利回りです。連続増配年数が30年あっても、いま買う利回りが2%なら、私の運用方針には合いません。
私が新規買いを入れる目安は「銘柄ごとの購入目安利回り」を持って、達するまで待つ運用です。たとえば、ある銘柄を「利回り4%以上で買う」と決めておけば、株価が高すぎる局面では手を出さずに済みます。これは「タイミングを当てる」のではなく、「待てる人だけが受けられるリターン」を取りに行く考え方です。
暴落や急落は、私にとっては「待っていた仕込み時」になります。連続増配シニアの優良銘柄が利回り4%を超えてくる場面は数年に一度しか来ませんが、その場面で買えるかどうかが20年のインカム差を決めると思っています。
配当性向 — 増配余力を測る
次に見るのが配当性向です。1株当たり配当(DPS)を1株当たり利益(EPS)で割った値で、利益のうち何%を配当に回しているかを表します。
私が使っている目安は次のとおりです。
- 30〜50%:増配余力ありのゾーン
- 50〜60%:余力は限定的、注視ゾーン
- 60%以上:無理して出している可能性を疑う
- 80%以上:次の利益後退で減配リスクを意識する
連続増配年数が長くても、配当性向が80%を超えてきた銘柄は「無理して連続増配を維持している」可能性があります。利益が一段下がる局面で減配や据え置きに転じる確率が高くなるため、年数の長さに惑わされず、配当性向は必ず確認します。
自己資本比率 — 還元継続の財務的な耐性
配当を出し続けるには、利益だけでなく財務的な耐性も要ります。リーマンショック級の事象が来たとき、自己資本が薄い企業は減配や無配転落のプレッシャーがかかります。
私が事業会社で見ている目安は、自己資本比率40%以上が安心圏、50%以上で保守的という感覚です。ただし金融・リース・不動産のように構造的に低くなる業種もあるので、業種補正は必要です。リース業の自己資本13%と、製造業の自己資本13%は意味が違います。
株式分割を経た「DPSの連続性」
最後に確認するのが、株式分割を考慮したDPSの連続性です。「20年で配当17倍」「23年で配当12倍」のような見出しは、当時のDPSをそのまま割って出した数字であることが多く、その間に株式分割があるとDPSの額面が大きく動きます。
たとえば、ある銘柄が10年前に2株分割を実施していると、当時のDPSが「分割前の数字のまま」表示されているのか「分割調整後の数字」なのかで、見かけの増配ペースは2倍違って見えます。「過去N年で配当M倍」という数字を見たら、分割タイミングを跨いでいないかをIR資料で確認するのが安全です。
私はIRバンクの公開データで直近10〜15年のDPS推移を見て、「ニュースで言っている増配率」と「分割調整後の実体の増配率」が一致しているかを確認します。
4銘柄を観察軸で見る
ここからは、上で述べた4つの観察軸で、5月のニュース4銘柄をそれぞれ見ていきます。数字は記事執筆時点のIR発表およびIRバンク公開データに基づくもので、私の判断ではあるものの、特定銘柄の取引を推奨するものではありません。
リンナイ(5947)— 連続増配シニアの王道、利回りは3%水準
25期連続増配の代表格で、2027年3月期の配当予想は1株106円(前期比+6円)、現在の配当利回りは約3.0%です。配当性向は38%、自己資本比率は67%、ROEは7.3%という財務プロファイルで、還元姿勢と財務健全性は文句のないレベルです。
手元のIRデータで2025年3月期の確定値(DPS 80円)から過去10年を遡ると、2015年3月期は25.33円。10年で約3.2倍の増配ペースです。これは分割調整後の実体ペースで、ニュースの「25年で17倍」よりは落ち着いた数字ですが、それでも年複利で10%超の増配率にあたります。
それでも私が現時点で買っていない理由は単純で、利回り3.0%が私の購入目安に届いていないからです。私の場合、リンナイのような財務優良な連続増配株でも「利回り4%以上で買う」基準を設けています。現在の株価から逆算すると、利回り4%に到達するには3割弱の下落が必要です。これは数年に一度しか起きない場面ですが、その場面まで待つのが私のスタイルです。リンナイは私の「待つ銘柄リスト」の上位にいます。
栗田工業(6370)— 水処理の安定感、利回り1.5%は遠い
23期連続増配、2027年3月期の配当予想は1株134円(前期比+22円)、配当利回りは約1.5%です。配当性向は51%、自己資本比率は61%、ROEは6.0%という構成で、水処理という競合の少ない事業ポートフォリオを持つ安定企業です。
手元のIRデータでは、2015年3月期のDPSが46円、2025年3月期が92円で、10年で2.0倍。増配ペースは年複利で7%程度と、リンナイより緩やかです。
栗田工業については、連続増配年数の素晴らしさより、利回り1.5%という現在地のほうが私には決定的でした。年間配当134円を受け取るのに必要な投資額は1株あたり約9,000円弱で、税引後の配当収入は1株あたり107円程度。投資効率としては、私の運用方針からは大きく外れます。
このタイプの銘柄は、相応の暴落が来ない限り買い候補に入りません。市場全体が3〜4割下落するような局面で、ようやく利回り2%台後半に乗ってきます。そういう場面が来たときに「買えるか」を試される銘柄として、観察リストの中段に置いています。
芙蓉総合リース(8424)— 配当が20年で20倍、ただし自己資本13%は要注視
22期連続増配、2027年3月期の配当予想は1株172円(前期比+14円)、配当利回りは約3.9%です。配当性向は30%、自己資本比率は13%、ROEは9.5%。
手元のIRデータでは、2015年3月期のDPSが26.67円、2025年3月期が151.67円で、10年で5.7倍。年複利で19%超の増配率という、4銘柄のなかで最も急ピッチな増配ペースです。配当性向30%は再投資余力が大きく、「まだ伸びる」シナリオも描けます。
ただし自己資本比率13%は、リース業特性として一般的とはいえ、4銘柄のなかで唯一財務健全性の評価が落ちる項目です。リース業は調達コスト(金利)の上昇局面で利鞘が圧迫されやすく、金利環境の変化が業績に直結します。私の判断では、現在の利回り3.9%は買い候補圏に近づいているものの、もう少し利回りが上がる場面、たとえば4.5%圏まで待つほうが安全だと考えています。
「配当が20年で20倍」というインパクトのある数字に目を奪われがちですが、自己資本比率13%という事実は、20年の還元実績とは別の次元で評価する必要があります。
高速(7504)— 23期連続増配、利回り1.84%は買い候補入りせず
23期連続増配、2027年3月期の配当予想は1株120円(前期比+4円)、配当利回りは約1.84%です。配当性向は60%、自己資本比率は67%、ROEは8.8%。
ここで注意したいのが、ニュース見出しの「23年で配当12倍」という増配率には、過去の株式分割の影響が含まれている可能性が高いことです。手元のIRデータでは、2016年3月期のDPSが26円、2026年3月期が116円で、10年で約4.5倍。10年で4.5倍も十分に立派な増配ペースですが、ニュースの「23年で12倍」とは数字の意味が違います。
高速は連続増配年数も財務も問題ないものの、配当性向60%は「次の利益後退で増配ペースが落ちる可能性」を意識するゾーンです。加えて利回り1.84%は、私の購入目安からは遠い。「連続増配シニアの優等生だが、いまは買う場面ではない」というのが私の見方です。
私はどう活用しているか — 「待つ銘柄リスト」運用
ここまで4銘柄を観察軸で見てきましたが、結果としてどれも「いまは買わない」判断になりました。では、これらの観察結果を私はどう使っているのかというと、月次でメンテナンスしている「待つ銘柄リスト」に反映させる用途です。
私の運用は次のようなリズムになっています。
- 月に1度、保有銘柄と候補銘柄の利回りを一括チェックする
- 銘柄ごとに購入目安利回り(リンナイなら4%、芙蓉総合リースなら4.5%、など)を持っておく
- その月に目安利回りに達した銘柄があれば、新規買いまたは買い増しを検討する
- 達していなければ、何もしない
ドルコスト平均法のように「毎月決まった額を機械的に買う」のではなく、「毎月決まった日にリストをチェックする」運用です。買わない月のほうが多いのが現実ですが、これが私のスタイルに合っています。
暴落や急落の場面では、このリストが本領を発揮します。連続増配20年超で還元姿勢が確認できている銘柄は、暴落時に拾いやすい銘柄群です。業績の戻りを長期で待てる確信が、年数の積み重ねによって裏付けられているからです。リンナイの利回りが4%まで上がる場面、芙蓉総合リースが4.5%まで上がる場面 — そうした場面が次にいつ来るかは分かりませんが、来たときに買えるよう待つだけです。
買い候補リストの作り方そのものについては、私が普段使っている評価軸を 失敗しない5軸スクリーニングチェックリスト にまとめています。減配の兆候の見方は 売却ルールと減配サインの見極め方 も合わせてどうぞ。
まとめ — 連続増配年数は「観察候補入り」のチケット
連続増配20年超は素晴らしい事実です。リーマンショックやコロナショックを越えてきた還元姿勢の裏付けであり、これからの暴落局面でも「業績の戻りを待てる銘柄」を絞り込むのに役立ちます。
ただし、それだけで「いま買う理由」にはなりません。私の場合は、利回り × 配当性向 × 自己資本比率 × 分割調整後の増配ペース、の4つを見て「待つかどうか」を決めています。今回見た4銘柄は、いずれも「観察リスト入り」ではあるものの、現時点の利回りでは買い候補圏に届かないか、財務面で慎重に見る必要がある銘柄でした。
高配当株は「買い値の利回り」で10年20年のインカムが決まる投資だからこそ、利回りが低い場面でルーティンに買い続けるのは合理的でない、と私は考えています。連続増配20年超のニュースが続いたここ2週間、私が「いまは様子見」と判断した記録でした。
次の2週間でどの銘柄が買い候補圏に入ってくるか、X(@tofu_dividend)で日次の銘柄観察も発信しています。気になる方はそちらもチェックしてみてください。
※ 本記事は個別銘柄の取引を推奨するものではなく、あくまで私個人の観察と運用方針を記録したものです。投資判断はご自身の責任でお願いします。