数年に一度の下落で「暴落こそ仕込み時」と動ける人と、画面を閉じて固まる人の差は、気合や根性ではありません。私も最初の数回は完全に後者で、戻ってから後悔して買い、平均取得単価を上げる失敗を繰り返しました。

その後たどり着いたのは、「暴落歓迎」を口で言うのではなく、そう動ける状態を平時に作っておくという考え方です。

この記事でわかること:

  • 暴落で動ける人が平時にやっている3層の設計
  • 動けない人が陥る3つの誤解
  • 私が暴落時に絶対やらない3つの行動

※投資助言ではなく「私はこういう設計で運用している」という体験記です。そのまま真似る用ではありません。


暴落で買い増せる人は、判断を平時に終えている

動ける人は、判断を暴落の瞬間にしていません。やっているのは「あらかじめ決めたルールの実行」だけです。本で語られる「暴落歓迎マインド」は、読み続けると「強気でいよう」「狼狽売りするな」という精神論に寄りがちですが、資産が日々2桁%減る中で精神論だけで動ける人はそう多くない。動ける人は次の3層を平時に作り込んでいます。

  1. インカムの仕組みを腹落ちさせる(買い値の利回りが20年のリターンを決めると本気で理解する)
  2. 銘柄ごとの目安利回りを決めておく(この値段なら買う、を平時に書き出す)
  3. 暴落時の行動ルールを書き出す(目安に達した銘柄だけ買う、達していなければ何もしない)

この3層がないまま暴落を迎えれば、感情と相場に翻弄されて当然です。


層1:買い値の利回りが10年20年を決める

高配当株は、買った瞬間の利回りがその後のインカム水準を決めます。同じ銘柄を利回り3%で買うか4%で買うかで、増配率が同じでも20年の配当総額は1.3倍以上違ってきます。

だから高配当株は「いつ買うか」が成績の大半を決めます。優良銘柄が利回り4%や5%で放置されるのは平時ではなく、暴落や急落のときだけ。ここまで腹落ちすると、下落は「資産が減る怖い時間」ではなく「買い場が訪れている貴重な時間」に見えます。精神論ではなく、利回りという数字が機械的に動いているだけの話です。

ドルコスト平均法を高配当株でルーティン化しないのも、この理解からです。毎月機械的に買うと利回りが低い局面(株価が高い局面)でも買い続けることになる。ルーティンにするなら「決まった額を買う」のではなく「決まった日に買いたいリストの利回りをチェックする」運用にしています。


層2:銘柄ごとの「目安利回り」を平時に書き出す

暴落の最中にゼロから「いま買っていいか」を判断するのは無理です。判断は平時に終わらせ、保有候補ごとに「この利回りに達したら新規買い」のラインを書いておきます。例(実保有の抜粋):

  • 三菱HCキャピタル(8593):4.0%以上
  • KDDI(9433):3.8%以上
  • NTT(9432):3.8%以上
  • 東京海上ホールディングス(8766):3.5%以上
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306):3.5%以上

平時の利回りは2%台後半〜3%台前半なので、目安到達には株価が1〜2割下がる場面が必要。つまりその下落局面でしか新規買いはしません。ラインを決めるとき見るのは、過去5〜10年の利回りレンジ/業種別の標準値/連続増配の継続性の3点です。

書いてしまえばあとは待つだけ。私は dividend-portfolio という Streamlit ツールで候補の利回りを毎日自動更新し、目安到達時だけ視認しています。この「書き出して待つ」が、暴落時に動ける本体です。


層3:暴落時の行動ルールを、感情の入る前に書く

目安に達しても「もっと下がるのでは」で手が止まります。対策は行動ルールを平時に書くこと。私のルールは3つだけ:

  • 目安利回りに達した銘柄から、リストの順に1単元ずつ買う
  • 同じ銘柄を一度に複数単元買わない(1日に同じ銘柄は1単元まで)
  • 目安に達していない銘柄は、どれだけ下がっても買わない

最適化の余地をなくすのが狙いです。「1日1銘柄1単元」には、下落が長引くほど買い増し回数が増えて分散される副作用があり、底を当てる必要がなくなってストレスが激減します。そして「目安に達していない銘柄は買わない」が一番大事。下落局面では何でも安く見えますが、買うのは平時に追跡してきた範囲だけ、と決めています。


暴落時に動けない人の3つの誤解

誤解1:含み損は「損」である

含み損は損ではありません。売却しないかぎり配当は出続けます。私の保有でも、買値から2割下がった時期に減配せず増配を続けた銘柄が複数あり、コロナショック直後でも通信・商社・銀行の主力は配当を維持または増配で乗り切りました。含み損を「損」と認識すると、下落でナンピンせず戻りで売る最悪のパターンに入ります。

誤解2:暴落は「市場の終わり」のサイン

「過去最大」「リーマン以来」を真に受けると市場の終わりに感じます。しかし日本株では、リーマンでもコロナでも優良連続増配銘柄の配当は概ね維持または継続増配でした。下がるのは株価であって企業のキャッシュフローではない、が基本構造です。もちろん構造的に減配する企業もあるので、層2で財務健全性・配当性向・連続増配年数で選別した銘柄だけをリストに乗せます。

誤解3:ドルコスト平均法なら平準化される

毎月機械的に買うのは正しい面もありますが、高配当株では利回りが低い局面でも買い続けることが副作用になります。利回り2.5%で買った株は20年保有しても年2.5%相当のインカムしか出ません。ルーティン化するなら買い金額ではなくチェック頻度を。毎月同じ日に利回りを見て、目安に達していれば買う、達していなければ何もしない。これなら暴落時に集中して買え、平時は現金を温存できます。


私が暴落時に絶対やらない3つの行動

  • 保有全銘柄を均等に買い増す:全銘柄が同時に目安に達することはまずなく、目安利回り運用と矛盾する
  • 目安に達していない銘柄を「下がったから」で買う:層3の歯止めを外すと結局なんでも買う運用になる
  • 配当性向が伸びている銘柄をナンピン:株価が下がっているのに配当性向が上がる銘柄は減配リスクが高まっている可能性がある(このチェック観点は減配サインを見極める記事に詳述)

3つ目は特に注意。下落局面は業績悪化と株価下落が同時に起きやすく、配当性向の急上昇は減配の前兆のことがあります。「下がったから安い」ではなく「下がっていて、かつ配当性向に異常がない」を満たす銘柄だけが対象です。


まとめ

3層の設計は、突き詰めれば「暴落時に判断しない」ための準備です。層1で性質を腹落ちさせ、層2で目安利回りを書き、層3で行動ルールを決める。平時に終えておけば、暴落時は「リストを見て、目安に達した銘柄を順に買う」だけになります。

優良銘柄が利回り4%や5%で買える場面は20年で数えるほど。会社員投資家は相場に張り付けないからこそ、平時に書いた目安利回りと行動ルールが、暴落時の自分の代わりに動いてくれます。「暴落で動けない」自分に気づいたなら、強気が足りないのではなく設計が足りないだけかもしれません。買いたい銘柄の名前と目安利回りを書き出すところから。


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