高配当株投資を始めるとき、最初の分かれ道が「ETFで持つか、個別株で持つか」だと思います。1本買えば分散が済むETFは手軽に見えるし、個別株は配当の手取りが大きい代わりに銘柄選びの責任が全部自分に来ます。どちらの言い分も一理あるので、ここで足が止まる人は多いはずです。

先に私の立ち位置を書いておきます。私はREITや米国株指数はETFで持っていて、日本の高配当株だけは個別株で持つと決めています。つまりETFを否定する立場ではなく、両方使ったうえで「この領域は個別株」と線を引いた側です。この記事では、コスト・分散・減配への対応・手間の4つの軸で両者を比較し、私がどこで線を引いたか、そして「この条件ならETFのほうがいい」と思うケースまで正直に書きます。

※本記事は私の体験と考え方の記録であり、特定の銘柄・商品の推奨ではありません。

前提の整理:ETFと個別株では「持っているもの」が違う

比較の前に、両者の構造の違いだけ短く整理します。

高配当ETFは、「配当利回りなどの条件で選ばれた数十銘柄の詰め合わせ」を1本で買う商品です。中身の銘柄は指数のルールに従って機械的に入れ替わり、運用の対価として信託報酬(保有している間ずっとかかるコスト)を払います。受け取るのは配当ではなく「分配金」です。

個別株は、その会社の株を直接持ちます。配当はその会社の業績と配当方針から直接やってきて、間に運用会社は挟まりません。どの銘柄を、いつ、いくらの利回りで買うかは、全部自分で決めることになります。

この「中身を選ぶのが指数ルールか、自分か」という違いが、これから書く4軸すべての根っこにあります。

コスト・分散・減配対応・手間の4軸で比較する

コスト

ETFは信託報酬がかかります。国内の高配当系ETFだと年0.1〜0.3%程度の商品が多い印象ですが、商品ごとに違うので目論見書での確認が前提です。率にすると小さく見えるものの、保有額300万円・年0.3%なら年9,000円。配当で月1万円を作ろうとしている人にとって、毎月の配当ほぼ1か月分が運用コストに消える計算です。しかも保有している限り、ずっと続きます。

個別株は保有コストがゼロです。かかるのは売買時の手数料だけで、単元未満株なら手数料無料で買える証券会社もあります。長期で配当を受け取り続ける投資ほど、この差は積み上がっていきます。

ここはコスト構造上、個別株に分があります。ただし後述する「手間」とのトレードオフで、私はこのコストを「銘柄選定の外注費」と捉えるならETFも筋が通ると思っています。

分散

1本で数十銘柄に分散できるのはETFの明確な強みです。自分で同じ分散を作ろうとすると、銘柄を選び、業種の偏りを確認し、買付のタイミングを分ける必要があり、時間がかかります。私も個別株で業種分散を作るのに年単位の時間をかけてきました。

ただ、ETFの分散には注意点が1つあります。中身は指数ルールで機械的に選ばれるため、「利回りが高く見えるが減配リスクを抱えた銘柄」が条件を満たして混ざることがある点です。利回りが目立って高い銘柄には市場が減配を織り込んでいるケースが混ざる、というのは個別株選びで私が一番警戒しているポイントですが、ETFはそこを自分の基準で除外できません。

個別株なら、配当性向や過去のDPS推移を見て「これは取らない」と自分で決められます。私が買う前に確認している基準は5軸スクリーニングチェックリストにまとめています。

分散の「量」はETF、分散の「質の管理」は個別株、というのが私の整理です。

減配への対応

保有銘柄が減配したときの動き方は、両者でかなり違います。

ETFは数十銘柄の分配金の合計なので、1社の減配の影響は薄まります。これは正直、ETFの強みです。個別株で1銘柄に偏った持ち方をしていると、その1社の減配で配当計画が大きく後退します。

一方で、対応の自由度は個別株にしかありません。個別株なら「減配の理由が一時的か、構造的か」を確認して、銘柄単位で持ち続けるか売るかを判断できます。私は減配サインの確認手順と売りルールを事前に決めていて(売却ルールと減配サインの見極めに書きました)、怪しい兆候の段階で動けます。ETFは中身の個別銘柄に対して何もできず、選択肢は「そのETFごと持つか、売るか」の二択です。

影響を薄めて受け入れるのがETF、影響を銘柄単位で管理するのが個別株。ここはどちらが優れているというより、性格の違いです。

手間

手間は圧倒的にETFが楽です。買ったら基本は持っているだけで、決算を読む必要も銘柄を入れ替える判断も発生しません。

個別株は、最低でも保有銘柄の決算チェックが必要です。ただ、私は手間を「毎日株価を見ること」だとは考えていません。私がやっているのは、毎月決まった日に買いたいリストの利回りを確認することと、保有銘柄の決算時に配当方針と業績を見ることの2つだけです。仕組みにしてしまえば、かける時間は月に数時間で収まっています。

それでも、この数時間を「確保できない」あるいは「楽しめない」なら、個別株は続かないと思います。ここは後述する向き不向きの核心です。

私が日本の高配当株を個別で持つと決めた一番の決め手

4軸を並べたうえで、私の決め手は1つでした。買ったときの利回りを自分で決められる、この1点です。

高配当株投資は、買い値の利回りがその後10年20年のインカムリターンをほぼ決めます。同じ銘柄でも、株価が高い局面で買えば利回り3%、急落時に拾えば4.5%。この差は保有している限りずっと続きます。だから私は銘柄ごとに「購入目安利回り」を決めて、そこに達するまで買わずに待つやり方をしています(設計手順は目安利回りで待つ高配当株投資に書きました)。

ETFでは、この「銘柄単位で割安なときだけ拾う」が構造的にできません。買えるのはETF全体の値段だけで、中身の1銘柄が暴落して目安利回りに達しても、その銘柄だけを拾うことはできないからです。毎月決まった額をETFで機械的に買い続ける方法も広く知られていますが、私はこのやり方を高配当株では取っていません。利回りが低い局面でもルーティンで買うことになり、買い値の利回りという一番効く変数を手放すことになる、というのが私の考えです(インデックスの成長を取りに行く投資なら、話は別です)。

実際、私の保有銘柄の利回りは中央値で4.1%、過半数が4%以上です。これは銘柄を当てたからではなく、目安に達した銘柄だけを拾うのを続けてきた結果だと思っています。急落で市場が暗いときほど買いたいリストの利回りが目安に達するので、私にとって暴落は「待っていた仕込み時」です。この感覚で動けるのは、買い値を自分で握れる個別株だからです。

逆に言うと、REITや米国株を私がETFで持っているのは、その領域では銘柄単位の目利きに時間を割かない(割けない)と判断したからです。自分が基準を持って判断できる領域は個別株、そうでない領域は仕組みに任せる。私の使い分けはこれだけです。

ETFのほうが向いていると私が思う人

ここまで個別株側の理屈を書いてきましたが、ETFのほうが合理的な人は実際多いと思います。私の周りを見ていても、次のどれかに当てはまるならETFでいいと思っています。

  • 銘柄を見る時間を確保するつもりがない人。月数時間でも、興味が持てない作業を何年も続けるのは無理があります
  • 決算や株価の変動で心が揺れて、売り買いがブレそうな人。ETFの「何もできなさ」は、裏返せばブレ防止装置です
  • 1社の減配で計画が崩れるのを何より避けたい人。分散による平準化はETFの本領です

逆に、企業の数字を見るのが苦にならず、買い値の利回りにこだわりたい人は、個別株を検討する価値があると思います。なお、「個別株は資金が大きくないと分散できない」とよく言われますが、いまは単元未満株で1株から買えるので、少額から業種分散を作ることは現実的になっています(私の買い増しルールはワン株実践編に書きました)。

個別株でいくと決めた場合に、最初にやること

もし個別株側を選ぶなら、私が最初にやってよかったと思う順序はこうです。

  1. 銘柄の絞り込み基準を持つ。利回りの数字だけで選ばないために、配当性向・DPS推移・財務の確認項目を先に決めます(5軸スクリーニング
  2. 銘柄ごとの購入目安利回りを書き出す。「いくらなら買うか」を相場が平常なうちに決めておきます
  3. いきなり大きく買わない。私は失敗の傷が浅い少額のうちに、選定ミスを何度か経験しました。減配で配当が後退した銘柄も持ったことがあります。その失敗が基準を磨いてくれた、というのが正直なところです

まとめ

  • ETFと個別株の違いの根っこは「中身を選ぶのが指数ルールか、自分か」
  • コストと買い値のコントロールは個別株、分散の手軽さと手間のなさはETF。減配対応は「薄めるETF・管理する個別株」で性格が違う
  • 私は、自分で基準を持てる日本の高配当株は個別株、そうでないREIT・米国株はETFと使い分けている
  • 銘柄を見る時間を確保するつもりがないなら、ETFを選ぶほうが続くと思う

どちらを選んでも、「利回りが高く見えるものに飛びつかない」という原則は共通です。まずは自分が銘柄チェックに時間を使えるタイプかどうか、そこから決めるのが遠回りに見えて近道だと私は思います。


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