「配当金で月1万円」は、高配当株投資を考え始めた人が最初に思い浮かべやすい金額だと思います。スマホ代や光熱費の一部がまかなえるくらいの、生活が少し楽になる実感のあるラインです。

ただ、そこに必要な元手を計算してみると、思ったより大きい数字が出てきます。私もこの計算を最初にしたとき、「この金額を貯めてから始めるのか」と少し気が遠くなりました。この記事では、利回り別の必要資金を早見表で示したうえで、必要額が貯まるのを待たずに階段を作っていく私のやり方を書きます。

配当金で月1万円に必要な資金(早見表)

月1万円、つまり年12万円を手取りで受け取るのに必要な元手は、「買ったときの配当利回り」と「課税口座かNISAか」で決まります。

課税口座では配当に20.315%の税金がかかるため、手取り12万円には税引き前で約15.1万円の配当が必要です。NISA(成長投資枠)なら配当は非課税なので、12万円ぴったりで足ります。

買い値の配当利回り 課税口座 NISA(成長投資枠)
3.5% 約430万円 約343万円
4.0% 約376万円 300万円
4.5% 約335万円 約267万円
5.0% 約301万円 240万円

ざっくり言えば、買い値利回り4%なら、目安はNISAで300万円です

2点だけ注意があります。1つ目、NISAで配当を非課税にするには、配当の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定しておく必要があります。ここを忘れると非課税になりません(詳細は新NISA × 高配当株の活用法に書きました)。2つ目、この表の利回りは「買った時点の利回りがその後も維持された場合」の計算です。減配されれば後退しますし、増配されれば前倒しになります。だからこそ、後半に書く銘柄の選び方が効いてきます。

必要資金は「買い値の利回り」で130万円変わる

早見表をもう一度見てください。同じ月1万円でも、買い値利回り3.5%と5.0%では、NISAで約103万円、課税口座なら約130万円の差があります。

これが、私が高配当株を「タイミング投資」と考えている理由です。配当株のインカムリターンは、買った瞬間の利回りでほぼ決まります。同じ銘柄でも、株価が高い局面で買えば利回り3%、急落局面で買えば4.5%ということが普通に起きます。どちらで買ったかは、その後10年20年の受取配当に効き続けます。

なので私は、インデックス投資で定番の「毎月決まった額を機械的に買う」やり方を高配当株ではしていません。毎月決まった額を買うルーティンは、利回りが低い(株価が高い)局面でも買ってしまうからです。代わりに、銘柄ごとに「この利回りまで来たら買う」という購入目安利回りを決めて、達するまで待ちます。ルーティン化しているのは購入ではなくチェックで、毎月決まった日に買いたいリストを見て、目安に達した銘柄があるときだけ買う運用です(設計手順は「目安利回り」で待つ高配当株投資にまとめています)。

目安利回りを守ること自体が、早見表で見たとおり必要資金を1〜2割圧縮する行為です。なので私は、目安に達するまでの待ち時間を遠回りだとは考えず、「待つのも投資のうち」と割り切っています。

私の現在地 — 保有銘柄の利回り分布

参考までに、私の保有銘柄の現状を書いておきます。現在株価ベースの配当利回りは平均3.9%、中央値は4%強で、保有銘柄の過半数が利回り4%以上です。

※いずれも執筆時点の株価ベースの参考値で、特定銘柄の推奨ではありません。

平均が4%を下回っているのは、買ったあとに株価が上昇して利回りが下がった銘柄や、REITなど性格の違う資産も混ざっているためです。逆に言うと、「買い値利回り4%前後」は、目安利回りを守って買っていれば特別な銘柄選定眼がなくても現実的に積み上がる水準だ、というのが私の実感です。早見表の「4%でNISA300万円」という行は、絵に描いた餅ではなく実際に狙える前提だと思っています。

もう1つ、早見表が織り込んでいない追い風があります。増配です。早見表は「買った時点の利回りが続く」前提の保守的な計算なので、保有銘柄が増配すれば、自分の買い値に対する利回りは買った日より育っていきます。たとえば買い値利回り4%の銘柄が配当を25%増やせば、買い値ベースの利回りは5%になり、追加投資ゼロで受取配当が増えます。連続増配を続けてきた銘柄を目安利回りで仕込めた場合、月1万円への道のりは早見表の数字より短くなることがあります。もちろん逆向きの減配リスクと表裏一体なので、私はこの追い風を「期待して計算に入れる」のではなく「来たら前倒しになるおまけ」と位置づけています。計算はあくまで保守的に、結果が良ければ御の字、という順序です。

いきなり満額を狙わない — ワン株で作る階段

300万円という数字を見て「貯まってから始めよう」と考えるのは、私はもったいないと思っています。私がいいと思う順序は、最初の目標を月1万円ではなく「月1,000円」に置くことです。

月1,000円なら年1.2万円。買い値利回り4%・NISAなら30万円で届きます。さらに、マネックス証券のワン株(単元未満株)なら1株から買えるので、数千円〜数万円単位で目安利回りに達した銘柄を拾っていけます。100株単位でまとめ買いする必要はありません(私の実際の買い増しルールはワン株で高配当株を少しずつに書きました)。

階段にすると、こうなります。

段階 手取り配当 必要元手の目安(利回り4%・NISA)
1段目 月1,000円(年1.2万円) 30万円
2段目 月3,000円(年3.6万円) 90万円
3段目 月5,000円(年6万円) 150万円
4段目 月1万円(年12万円) 300万円

この順序にする理由は2つあります。1つは、配当が実際に振り込まれる体験が積立を続ける燃料になること。証券口座に数百円でも配当が入ると、計算上の話だった「配当収入」が現実の収入に変わります。もう1つは、少額のうちに銘柄選びの失敗を経験できることです。30万円の段階での選定ミスと、300万円を一括投入したあとのミスでは、傷の深さがまったく違います。

利回りの数字だけで集めると遠回りになる

月1万円を急ぐと、表面利回りの高い銘柄ばかり集めたくなります。早見表でも利回り5%なら240万円で済むわけで、気持ちはわかります。ただ、ここが一番の落とし穴だと私は考えています。

配当利回りが目立って高い銘柄には、市場が減配を織り込んでいるケースが混ざっています。減配されると配当が減るだけでなく株価も下がりやすく、月1万円どころか元手ごと後退します。私自身、利回り7%台の銘柄や「1年で配当1.4倍」という増配率の銘柄に心が動いたものの、過去のDPS推移を確認して見送ったことが何度もあります(そのときの確認手順は「1年で1.4倍」の落とし穴に書いています)。

私が買う前に確認しているのは、配当の原資が利益の範囲に収まっているか(配当性向)、10年単位でDPSが減っていないか、財務に無理がないか、といった点です。チェックの全体像は5軸スクリーニングチェックリストにまとめてあるので、ここでは省略します。月1万円への最短ルートは利回りの高さではなく、減配で後退しないことだ、というのが私の結論です。

まとめ:今日できること

  1. 自分の目標額を早見表に当てはめ、必要元手の目安を知る(月1万円・利回り4%・NISAなら300万円)
  2. 最初の目標を月1,000円(元手30万円)に置き直す
  3. 証券口座とNISA口座を用意し、配当受取を株式数比例配分方式に設定する
  4. 銘柄ごとの購入目安利回りを決め、毎月のチェック日に達した銘柄だけをワン株で買う

必要資金の計算は一瞬で終わりますが、そこから先は数年がかりの積み上げです。だからこそ、満額が貯まるのを待つのではなく、30万円の1段目から配当を受け取り始めるのが、私が実際に歩いてきた順序です。


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