はじめに:高配当株は「毎月機械的に積み立てる」商品ではない
私は高配当株を、毎月決まった額で機械的に積み立てる買い方はしていません。利回りが低い局面(株価が高い局面)でも構わず買い続けても、買い値の利回りが長期のインカムを決める高配当株では旨味が薄いからです。ドルコスト平均法はインデックスや成長株には合っても、高配当株の主力の買い方にはしない、というのが私の考えです。
そのうえで普段どう買っているかというと、割安だと判断した銘柄を、マネックス証券のワン株(単元未満株)で少しずつ買い増しています。毎月のように買ってはいますが、買うのは目安利回りに達した銘柄だけ。対象がなければ、その月は買いません。買うタイミングだけ見ると毎月の積立に似ていますが、銘柄を割安かどうかで先に選んでいる点がまったく違います。
この記事では、ワン株を使った私の買い増しの実際を書きます。なぜワン株なのか、買い増しのルールをどう組んでいるのか、そして単元になるまでどう積み上がっていくのか。マネックスの他の機能や選んだ経緯はメイン口座にマネックスを使い続けている理由に、銘柄の絞り込みについては銘柄スカウターの10年スクリーニングに書いています。
ワン株を使う理由 — 手数料ゼロと、少額での分散
マネックスのワン株は、通常100株単位で取引する株を、1株から買える仕組みです。私がこれを使う理由は2つあります。
1つは、ワン株の買付には売買手数料がかからないことです。単元(100株単位)での売買には手数料が発生するのですが、ワン株での買付であれば手数料を気にせず買い増せます。少額を何回にも分けて買う運用とは相性がいい仕組みです。
もう1つは、少ない資金でも複数の銘柄に分散できることです。高配当株を始めた当初、私にまとまった資金があったわけではありませんでした。1銘柄を100株買うには数万円から数十万円かかることもありますが、ワン株なら1株単位なので、同じ予算でも複数の銘柄に散らせます。1社に集中して減配や株価下落をまともに受けるより、最初のうちは銘柄を分けてリスクを散らしたい。その分散を、少額から実現できるのがワン株でした。
この2つの利点は、特に資産を積み上げている途中の段階で効きます。手数料を払わずに、少額で、何銘柄にも分けて買える。高配当株をこれから増やしていく人にとっては、入り口として使い勝手のいい機能だと感じています。
私の買い増しは2系統に分かれている
ここが運用の中身です。私の高配当株の買い増しは、銘柄の保有状況によって2系統に分かれています。
すでに単元(100株)を保有している銘柄については、単元単位で買い増します。ルールはシンプルで、原則として株価が15%下落したら1単元(100株)追加する、というものです。これは押し目や暴落を待って単元で仕込む動きで、私のタイミング投資の考え方そのものです。暴落を待ってまとめて買うこのやり方の背景は、暴落を仕込み時に変えるマインドセットに詳しく書きました。
一方、まだ単元に届いていない銘柄や、これから積み増したい銘柄については、ワン株で買い増します。こちらのルールは、目安利回りに達している銘柄を、毎月定期的に少しずつ買う、というものです。
同じ「買い増し」でも、単元保有済みの銘柄は暴落待ちの単元買い、まだ薄い銘柄はワン株での定期買い、と動きを分けているわけです。前者は大きな下落というイベントを待つ運用、後者は時間をかけてコツコツ積む運用です。この後者のワン株のほうが、冒頭の「ドルコストではないのか」という疑問に直結します。
「毎月買う」前に「割安ゲート」がある
ワン株の買い増しで私がいちばん効かせているのが、買う前に一段かける「割安かどうか」のフィルタです。順序を書き出しておきます。
私が毎月買うのは、どんな銘柄でもありません。目安利回りに達している、つまり割安だと判断した銘柄だけです。目安利回りというのは、銘柄ごとに「この利回りまで来たら買っていい」と平時に決めておくラインのことで、考え方は目安利回りで買うタイミングを設計する記事にまとめています。
順序が大事です。先に割安かどうかのゲートがあって、そのゲートを通った銘柄の中だけで、時間を分散して定期的に買う。これが私のワン株運用の構造です。ドルコスト平均法は、このゲートがありません。利回りが低かろうが、株価が高かろうが、毎月同じ額を機械的に買います。私が否定的なのは、まさにこの「割安かどうかを問わない」点です。高配当株は買い値の利回りが長期のインカムを決めるので、利回りが低い局面でも構わず買い続けるのは合理的でないと考えています。
だから、私のワン株の買い増しは、目安利回りに達した銘柄が一つもなければ、その月は何も買いません。買う対象がゲートを通らなければ、定期的な買いも止まります。ここが、毎月必ず買うドルコストとの、いちばんはっきりした違いです。時間分散はあくまでゲートを通った銘柄の中の話で、ゲート自体は割安かどうかで開け閉めしている、と整理すると分かりやすいと思います。
ワン株で単元化した銘柄の実例
ワン株での買い増しを続けた結果、いくつかの銘柄は最終的に単元(100株)に到達しました。過去に単元化まで持っていった銘柄として、日本特殊陶業や三井物産があります。これらは、ワン株で1株ずつ買い増していった積み重ねが、時間をかけて100株に届いた例です。
一つ、メカニズムが違う例も挙げておきます。伊藤忠商事は、私の場合は買い増しで単元化したのではなく、保有していた単元未満株が株式分割で株数が増えた結果、単元に到達しました。株式分割は1株を複数株に分ける仕組みなので、買い増しとは別の経路で株数が増えます。同じ「単元化した」でも、コツコツ買い増した銘柄と、分割で株数が増えた銘柄では成り立ちが違うので、ここは正確に区別しておきます。
これらの銘柄名は、あくまで私が過去にこういう積み上げ方をした、という実例として挙げています。いまこれらの銘柄が買いかどうかは別の話で、特定銘柄の購入を勧めるものではありません。ワン株でコツコツ買うと、こういう形で時間をかけて単元化していく、という運用のイメージを持ってもらうための例だと受け取ってください。
単元化すると、その銘柄はその後の運用で先ほどの2系統のうち「単元保有済み」のほうに移ります。つまり、それ以降の買い増しは15%下落を待った単元買いに切り替わります。ワン株でゼロから積み上げ、単元化したら暴落待ちの単元買いに移行する。この流れが、私の中での1銘柄のライフサイクルになっています。
ワン株の制約 — 指値できない、寄付でしか約定しない
便利なワン株ですが、単元での取引にはない制約もあります。いちばん不便なのは、価格を指定して買えないことです。
ワン株では指値注文ができません。注文は成行のみで、約定するのは寄付、つまりその日の取引が始まる最初の値段です。「この値段まで下がったら買う」という指値の使い方ができないので、自分が注文を出したあと、実際にいくらで約定するかは、寄付の値段が決まるまで分かりません。
この制約は、私の運用とは折り合いがついています。ワン株の買い増しは、もともと目安利回りに達した割安な銘柄を、時間をかけてコツコツ買う運用です。1回あたりの株数も少額なので、1株の約定価格が数円から数十円ぶれても、長期で見れば影響は小さい。逆に、単元でまとまった株数を狙った値段で仕込みたいときは、指値が使える単元の取引のほうを使います。だからこそ、暴落待ちの大きな仕込みは単元、コツコツの積み増しはワン株、と使い分けているわけです。
制約があるからこそ、ワン株を何に使い、何に使わないかがはっきりします。少額・分散・手数料ゼロのコツコツ買いには向くけれど、狙った値段でまとまった株数を一気に仕込むのには向かない。この向き不向きを分かったうえで使えば、ワン株は高配当株を積み上げる強い味方になります。
まとめ — ゲートが先、時間分散は後
私のワン株運用は、毎月コツコツ買うという見た目だけならドルコスト平均法とそっくりです。でも中身は違います。目安利回りに達した割安な銘柄だけを買うという割安ゲートが先にあって、そのゲートを通った銘柄の中で時間を分散して定期的に買う。ゲートが先、時間分散は後。この順序が、私の運用とドルコストを分けています。
買い増しを2系統に分けているのも、同じ考え方の延長です。単元を持っている銘柄は15%下落を待った単元買い、まだ薄い銘柄はワン株での定期買い。どちらも「割安なときに買う」という軸は共通していて、銘柄の状況に応じて手段を変えているだけです。
ワン株には指値ができないという制約もありますが、少額・分散・手数料ゼロのコツコツ買いという用途には合っています。これから高配当株を積み上げていく人にとって、ワン株は入り口として使いやすい仕組みだと思います。読者の方が試すなら、まずは買いたい銘柄の目安利回りを一つ決めて、その水準に来たときだけワン株で1株買ってみる、というところから始めると、ドルコストとの違いを体で確かめられると思います。
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この記事で紹介したワン株は、マネックス証券の口座を持っていれば使えます。1株単位・買付手数料なしで少額から分散できる仕組みは、高配当株をこれから積み上げる段階で使い勝手がいい機能です。気になる方は、実際の注文画面を自分の目で触って、自分の積み立て方に合うか確かめてみてください(口座開設・口座維持は無料)。