配当金には、受け取った時点で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかっています。特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が天引きしてくれるので、確定申告をしなくても手続きは完結します。「配当は何もしなくていい」と聞いて、そのままにしている人が多いはずです。

私は副業の関係で毎年青色申告をしているので、申告書を作るタイミングで「配当をどう申告するか(しないか)」も毎年セットで見直しています。調べてみると、配当には申告不要・総合課税・申告分離という3つの選択肢があり、どれが合うかは人によって違いました。この記事では、その分かれ目と、私が申告前に確認している落とし穴を整理します。

※税金の記事という性質上はじめにお断りします。本記事は2026年7月時点の制度に基づく私の理解の整理であり、税務アドバイスではありません。税制は改正されますし、有利不利は個々の所得状況で変わります。実際の申告は国税庁の一次情報(タックスアンサー等)を確認のうえ、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談してください。

前提:特定口座(源泉徴収あり)なら、何もしなくても完結している

まず出発点です。上場株式の配当は受取時に20.315%が源泉徴収されており、確定申告をしない(申告不要制度を使う)ことが認められています(国税庁タックスアンサーNo.1330)。特定口座(源泉徴収あり)で受け取っているなら、放置していても無申告のペナルティがあるわけではありません。

NISA口座の配当はそもそも非課税なので、申告の話自体が発生しません。ただし配当の受取方式を「株式数比例配分方式」にしていないと非課税にならないという有名な落とし穴があります。ここは新NISA×高配当株の記事に書いたので、未設定の人は先にそちらを確認してください。

つまりこの記事のテーマは「申告しなければいけないか」ではなく、「申告しない・総合課税で申告する・申告分離課税で申告する、の3択のうちどれを選ぶと自分の税負担が軽くなるか」です。

3つの選択肢の違い

選択肢 税率 主なメリット 主な注意点
申告不要(何もしない) 20.315%で完結 手間ゼロ・所得に算入されない 取り戻せる余地があっても放置になる
総合課税で申告 累進税率(給与等と合算) 配当控除が使える 国内株限定の恩恵・所得が高いと逆に不利
申告分離課税で申告 20.315% 譲渡損と損益通算できる 税率自体は下がらない

見落としやすいルールが1つあります。申告する配当については、総合課税と申告分離課税を1つの申告の中で併用できません(国税庁タックスアンサーNo.1331)。「国内株は総合課税、米国ETFは申告分離」のような銘柄ごとの使い分けはできず、申告するなら全部同じ方式に揃える必要があります。一方で「申告するかどうか」自体は源泉徴収口座ごとに選べるので、組み合わせの自由度は「口座単位で申告に含めるか」×「含めた分は一方式に統一」と覚えておくと迷いません。

私はここを最初に誤解していて、「配当控除が効く国内株だけ総合課税にすればいい」と思っていました。実際には手持ちの配当の構成(国内か外国か)を見て、全体としてどちらの方式が得かを判断する必要があります。

総合課税+配当控除が効く条件

総合課税を選ぶと配当所得が給与などと合算されて累進税率がかかりますが、代わりに配当控除(国内株の配当に対する税額控除・所得税10%+住民税2.8%が基本)が使えます(国税庁タックスアンサーNo.1250)。

累進税率が上がる分と配当控除で引ける分を差し引きすると、目安として課税所得が695万円以下の人は、国内株の配当については総合課税のほうが源泉徴収の20.315%より実効税率が低くなります。たとえば課税所得330万〜694.9万円の層では、所得税側(20%−配当控除10%)×復興税1.021+住民税側(10%−2.8%)で実効約17.4%です。課税所得がそれ以下の層ならさらに下がります。

ただし、この恩恵には2つの重要な限定があります。

1つ目は、配当控除の対象は国内法人からの配当だけということです。米国株や海外ETFの分配金には配当控除が使えません。それどころか、総合課税を選ぶと(統一ルールにより)配当控除のない外国配当まで累進税率に巻き込まれます。外国の配当が多い人ほど総合課税は不利に傾きます。

2つ目は制度改正です。以前は「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という申告テクニックが広く紹介されていましたが、この仕組みは廃止され、2023年分の確定申告(2024年度の住民税)から住民税の課税方式は所得税と自動的に一致します。ネット上には改正前の記事がまだ多く残っているので、「住民税だけ別方式」を前提にした古い損得計算をそのまま使わないよう注意してください。

配当控除のやり方 — 作成コーナーを使えば控除額の計算は自動

「配当控除のやり方が難しそう」で止まっている人向けに、実際の作業を書いておきます。私は毎年、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作っていますが、配当部分でやることは実質2つだけです。

  1. 特定口座年間取引報告書(証券会社が年初に交付)を手元に用意する
  2. 作成コーナーの株式等の入力画面で報告書の記載どおりに転記し、課税方式(総合課税か申告分離か)を選ぶ

配当控除の額そのものは、総合課税を選べば作成コーナーが自動計算してくれるので、控除率を自分で計算する場面はありません。証券会社が交付するデータ(xmlファイル)を読み込めば転記すら省略できます。私は副業の青色申告と一緒にe-Taxで提出していますが、配当まわりの追加作業は毎年30分もかかっていません。「やり方が難しいから放置」はもったいない、というのが実際にやっている側の感覚です。

申告分離課税が効く場面

申告分離課税は税率20.315%のままなので、それ単体では源泉徴収と何も変わりません。効くのは組み合わせです。

まず、その年に株の売却損(譲渡損)が出ている場合。申告分離で申告すると配当と譲渡損を損益通算でき、配当から引かれていた税金の還付を受けられます。使い切れない損失は翌年以後3年間繰り越せます(国税庁タックスアンサーNo.1474)。仮の数字で置くと、その年の配当が20万円・譲渡損が20万円なら、損益通算で配当所得が相殺され、源泉徴収されていた約4万円が還付される計算です(同一の源泉徴収口座内なら口座内で自動通算される場合もあります)。高配当株投資では売却ルールに沿って損切りする年がどうしても発生するので、損を出した年こそ申告を検討する価値があります。

次に、米国株・海外ETFの配当がある場合。米国の配当は現地で10%引かれた後の金額にさらに日本の20.315%がかかる二重課税の状態になっています。この現地分を取り戻す枠組みが外国税額控除で、確定申告をしないと使えません(国税庁タックスアンサーNo.1240)。控除には所得税額に応じた限度額の計算がありますが、「申告すれば取り戻せる余地がある税金が、放置だとそのまま消えている」という構図は知っておいて損がないと思います。

私はREITや米国株指数はETF、日本の高配当株は個別株という使い分けをしているので、国内配当と外国分配金が両方あるタイプです。この構成だと「国内だけ見れば総合課税が有利、外国分を考えると話が変わる」という綱引きになり、どちらが得かはその年の配当構成と譲渡損の有無で毎年変わります。だから私は方式を固定せず、毎年2月に年間取引報告書を見てから決める運用にしています。

申告する前に確認している落とし穴

申告して税金が戻っても、別のところで負担が増えては本末転倒です。私が申告書を作る前に確認しているのは次の4点です。

  • 合計所得金額への影響:配当を申告すると(総合・分離どちらでも)配当が合計所得金額に算入されます。配偶者控除や扶養の判定、各種の所得制限にかかっている人は、還付額より影響のほうが大きくなり得ます。会社員の社会保険料は給与ベースなので影響しませんが、国民健康保険の人は保険料に直結します。
  • ふるさと納税のワンストップ特例:確定申告をするとワンストップ特例は無効になります。申告するなら寄附金控除も申告書に必ず含める必要があります。私は青色申告で毎年申告するのでワンストップ特例は最初から使っていませんが、「配当のために初めて申告する年」の人が忘れやすいポイントです。
  • 源泉徴収口座の申告は取り消せない:いったん申告書に含めて提出すると、後から「やっぱり申告不要にする」という変更はできません。出す前に損得を確定させておく必要があります。
  • 情報の鮮度:前述の住民税一致のように、配当まわりは近年の改正が多い領域です。判断の根拠は年号つきの一次情報(国税庁タックスアンサー)で確認するのが確実です。

まとめ — 私は3つの数字を見てから決めています

配当金の確定申告は、義務ではなく選択です。私が毎年見ているのは次の3点です。

  1. 源泉徴収票の課税所得(695万円以下なら国内配当の総合課税が候補に入る)
  2. 年間取引報告書の配当の内訳(国内と外国の比率で総合課税の損得が変わる)
  3. その年の譲渡損の有無(損が出た年は申告分離での損益通算を検討する)

この3つで自分の型がだいたい決まります。手間に見合わないと感じたら申告不要のままでも完結する、という退路があるのもこの制度の良いところです。まずは手元の年間取引報告書を開いて、配当の内訳を眺めるところから始めてみてください。

なお申告方式の検討には特定口座年間取引報告書が起点になります。私はメイン口座のマネックス証券(PR)で電子交付をまとめて確認していて、配当・譲渡損益・源泉徴収額が1枚で揃うので、この記事の3点チェックがそのまま回せます。

配当の受け取りと買い増しの日々の記録は X(@tofu_dividend)で発信しています。よければのぞいてみてください。

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