「高配当株はやめとけ」で検索してこの記事に来た方は、たぶんどこかで始めようとしているか、すでに始めていて不安になっているかのどちらかだと思います。私は日本の高配当株を個別株で保有し続けている側ですが、最初に正直に書いておくと、やめとけ論の批判は半分正しい、というのが続けてきた私の実感です。

だからこの記事は「批判は全部誤解です」という擁護記事ではありません。代表的な批判を1つずつ「事実かどうか」で仕分けし、事実だと認めた上で、それでも私が続けている条件と、逆に私自身が「その状況ならやめておいたほうがいい」と思うケースまで書きます。

この記事でわかること:

  • 「やめとけ」の代表的な批判4つの、どこまでが事実か
  • 批判が事実でも私が続けている理由(目的の違い)
  • 私が「やめとけ」に同意するケース3つ
  • それでも始めるなら、最低限先に決めておく3つのライン

※投資助言ではなく「私はこう考えて続けている」という記録です。そのまま真似る用ではありません。


「やめとけ」の中身は大きく4つ — それぞれ事実かどうか

批判①:トータルリターンでインデックスに劣後しがち

これは概ね事実だと私は思っています。

高配当を出す企業は成熟企業が中心で、利益を配当で株主に返すぶん、事業への再投資で株価を伸ばす力は成長企業に劣る傾向があります。「値上がり益+配当」の合計で見たとき、全世界株や米国株のインデックスに負ける期間が長いのは、データを持ち出すまでもなく構造的にそうなりやすい話です。

ここで「高配当株でも勝てる」と反論を始めると話がおかしくなります。私の答えは反論ではなく、そもそも競っている土俵が違う、です。私は資産の最大化を高配当株に求めていません。何を求めているかは後半に書きます。

なお、指数系との比較や「ETFで持てばいいのでは」という論点はETFと個別株どっちで持つかで正面から扱ったので、そちらに譲ります。

批判②:配当のたびに課税されて非効率

これも事実です。

配当を受け取るたびに約20.315%が源泉徴収されます。インデックス投信のように分配せず内部で再投資してくれる商品なら、この課税は売却まで繰り延べられる。「複利効率だけを比べれば配当を出さないほうが有利」は、税制の構造上そのとおりです。

私がやっている緩和策は2つで、ひとつはNISA枠を高配当株に使うこと(NISAで高配当株投資をどう組むか)、もうひとつは課税口座の配当について申告方式を毎年選び直すことです(配当金に確定申告は必要か)。それでも「非課税で完全に再投資され続ける」状態には届きません。ここは高配当株を選ぶ側が引き受けるコストだと割り切っています。

批判③:利回りの高さには罠がある

事実ですし、私はこれで実際に痛い目を見ています。

配当利回りが目を引く水準まで上がっている銘柄には、しばしば理由があります。私が保有していた銘柄では、配当性向が3期で35%→52%→78%と急上昇し、利回り5%台で魅力的に見えた状態から次の通期決算で減配、株価も2割下落しました。振り返れば「3期分の配当性向を並べる」だけで見抜けた兆候で、この反省は売却ルールと減配サインの5観点にまとめています。

利益の裏付けなく配当だけ出ているケースの見分け方はタコ足配当の見分け方に、増配率の見かけの良さに隠れたリスクはUBE・日本CMKの実例に書きました。つまり「罠がある」は正しい。ただしそれは「利回りランキングの上から買う」やり方への批判であって、財務を確認してから買う運用まで否定するものではない、というのが私の整理です。

批判④:暴落や減配で心が折れて、結局やめる人が多い

半分事実だと思います。ただしこれは高配当株という商品の問題ではなく、始める前に設計を決めていないことの問題だ、というのが私の考えです。

株価が3割下がった局面で買い増せるか、保有銘柄が減配したときに売る基準があるか。ここを決めずに始めると、下落のたびに判断がぶれて、いちばん安いところで投げて退場する。逆に設計があれば、暴落はむしろ「待っていた仕込み時」に変わります(暴落歓迎は強気ではなく設計)。批判④への答えは商品選びではなく、後述の「先に決めておく3つのライン」です。


それでも私が続けている理由 — 目的がそもそも違う

批判①と②を認めた上で続けているのは、私が高配当株に求めているものが資産の最大化ではなく、「給与以外のキャッシュフローの積み上げ」だからです。

毎年の配当は、株価がどう動こうと現金で入ってきます。私はこれを「生活費の底上げ」と「将来、働き方を変えるときの収入の床」として位置づけています。資産評価額は暴落すれば3割減りますが、財務の裏付けがある銘柄群の配当は、評価額ほどには減りません。値動きに関係なく入る現金の流れを作ることが目的なら、配当を出さない投信を取り崩す方式より、私には高配当株のほうが性に合っていました。

そしてこの目的で見ると、効いてくる変数がトータルリターンではなく「買い値に対する利回り」に変わります。

買い値の利回りが20年のインカムを決める

同じ銘柄を利回り3.0%の株価で買った場合と4.0%で買った場合、20年間の配当総額(年平均増配率5%・再投資なしの単純合計)は買値に対して99.2%と132.3%。差は約33ポイント、株価100万円分なら33万円です。買った瞬間の利回りが、その後の全期間のインカムに効き続けるからです。

だから私は「毎月決まった額を機械的に買う」やり方を高配当株では取っていません。銘柄ごとに購入の目安利回りを書き出しておき、毎月決まった日にリストを確認して、達している銘柄があるときだけ買います(設計手順は目安利回りで待つ高配当株投資)。ドルコスト平均法はインデックスの成長を取りに行く投資では合理的でも、買い値の利回りが成果を決める高配当株では、利回りが低い局面でもルーティンで買い続ける理由がない、というのが私の考えです。

この「待って買う」を続けてきた結果、いま私の保有銘柄の配当利回りは中央値で約4.0%、およそ半数が4%以上です。市場全体が高値の局面では目安に達する銘柄がゼロの月も普通にあり、その間は買いません。待つことそのものが、批判③の罠の多くを回避してくれます。


私が「やめとけ」に同意するケース

続けている側からですが、次の3つに当てはまるなら、私も高配当株はやめておいたほうがいいと思います。

  • 資産の最大化が最優先の人。 20〜30代で、当面使う予定のないお金を最大限増やしたいなら、批判①②がそのまま効きます。課税を繰り延べながら複利が回るインデックス積立のほうが目的に合っています。私も「増やすフェーズ」の資金まで高配当株に寄せてはいません。
  • 利回りランキングから買いたい人。 財務を確認する時間を取らずに利回りの数字だけで選ぶなら、批判③の罠を高い確率で引きます。この場合は個別株ではなく、分散された投信・ETFで持つほうが事故が少ないはずです。
  • 下落局面で買い増す自信がない人。 高配当株の旨味は株価が下がって利回りが上がった局面で仕込めることに集中しています。暴落で動けない・株価の変動で夜眠れないなら、この投資の一番おいしい場面を毎回逃すことになり、続ける意味が薄くなります。

逆に言えば、「毎月のキャッシュフローがほしい」「決算を確認する月数時間は取れる」「下がったときに買う設計を先に作れる」なら、やめとけ論に怯える必要はないと私は思っています。


始める(続ける)なら、先に3つのラインを決める

批判④で書いたとおり、退場する人の多くは商品ではなく設計で躓きます。私が実際に運用しているラインは3つです。

  1. 買うライン: 銘柄ごとの目安利回りをリスト化し、達するまで買わない。「何となく良さそう」での購入を物理的に封じます
  2. 売るライン: 減配サインの点検項目と「減配アナウンスが出たら翌営業日に売る」などの売却条件を先に文章化しておく
  3. 上限ライン: 1銘柄の比率上限(私は取得時5%)を決め、超えたら機械的に調整する

3つとも、相場の最中に考えると感情に流されます。平時に文章で書いておいて、局面ではそれに従うだけにする。私の場合、この仕組み化にかかる時間は月に数時間で収まっています。


まとめ

  • 「やめとけ」の批判のうち、インデックス劣後・配当課税・利回りの罠は事実。反論ではなく、引き受けるコストとして認識する
  • それでも成立するのは、目的が資産最大化ではなくキャッシュフローの場合。効く変数がトータルリターンから「買い値の利回り」に変わる
  • 資産最大化が最優先・ランキング買いをしたい・下落で動けない、のどれかに当てはまるなら、私も高配当株はやめておいたほうがいいと思う
  • 始めるなら、買うライン・売るライン・上限ラインの3つを先に文章化する

「やめとけ」と検索して不安になったら、見るべきは他人の結論ではなく自分の目的です。増やしたいのか、毎月の現金の流れがほしいのか。まずはそれを1行書き出すところからだと私は思います。


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