はじめに:スクリーニングの「考え方」と「実際の画面」は別物
高配当株の銘柄選びについて、以前5軸スクリーニングのチェックリストという記事を書きました。配当利回り・連続増配・配当性向・自己資本比率・売上トレンドの5つの軸で、高配当の罠を避けながら候補を絞るという内容です。
ただ、あの記事で書いたのは「どういう観点で見るか」という考え方の部分でした。その5軸を、実際に毎月どの画面で、どんな数値を入れて回しているのかという、手を動かす部分までは触れていません。
この記事で書くのはそこです。私が高配当株の銘柄選びで使っているマネックス証券の銘柄スカウター、その中の10年スクリーニング機能で、実際にどんな条件を設定しているかを、設定値ごと公開します。なお、ここで挙げる条件はあくまで私の一例です。読者の方がそのまま真似るためのものではなく、自分の基準を決めるときの叩き台として見てもらえればと思います。マネックスを使い始めた経緯やほかの機能についてはメイン口座にマネックスを選び続けている理由に書いています。
銘柄スカウターの10年スクリーニングという機能
銘柄スカウターには、過去10年分の業績データを使って銘柄を絞り込むスクリーニング機能があります。一般的な証券会社のスクリーナーは「今期の配当利回り」「現在の自己資本比率」といったスナップショットの数値で絞るものが多いのですが、10年スクリーニングは「過去10年で連続して増収しているか」「10年の売上成長率が何パーセントか」といった、時間軸を持った条件で絞れるのが特徴です。
高配当株を長期保有する前提で選ぶなら、ある一時点の数字より、10年単位で業績がどう動いてきたかのほうが大事だと私は考えています。一度きりの好決算でたまたま条件を満たした銘柄ではなく、長く安定して稼いできた銘柄を拾いたいからです。10年スクリーニングは、その「長く安定して稼いできたか」を条件にできる点で、高配当株の選別と相性がいいツールです。
設定した条件は「マイスクリーニング」として保存しておけます。私は自分の条件一式を保存していて、月に1回それを呼び出して該当銘柄をチェックする、という使い方をしています。毎回ゼロから条件を入れ直す必要はありません。
私が実際に設定している10の条件
私がマイスクリーニングに保存している条件は、次の10項目です。
| # | 条件項目 | 区分 | 設定値 |
|---|---|---|---|
| 1 | 連続増収年数(売上高) | 通期業績 | 連続4期以上 |
| 2 | 連続増益年数(営業利益) | 通期業績 | 連続4期以上 |
| 3 | 利益率(営業利益) | 通期業績・5年 | 10%以上 |
| 4 | 利益率(営業利益) | 今期会社予想 | 10%以上 |
| 5 | 予想配当利回り | 分析指標 | 3%以上 |
| 6 | 配当性向 | 分析指標 | 50%以下 |
| 7 | 自己資本比率 | 分析指標 | 40%以上 |
| 8 | 成長率(売上高) | 通期業績・10年 | 4%以上 |
| 9 | 成長率(営業利益) | 通期業績・10年 | 4%以上 |
| 10 | 連続増配年数 | 分析指標 | 連続4期以上 |
スカウターの画面では、条件は「通期業績」「分析指標」「今期会社予想」といった区分ごとにまとまっています。表の区分の列が、その条件をスカウターのどのタブで設定するかの目印です。たとえば連続増収・連続増益や売上成長率は通期業績の区分、配当利回り・配当性向・自己資本比率・連続増配年数は分析指標の区分にあります。
それぞれの条件がどんな狙いを持っているかを、簡単に補足します。
- 連続増収・連続増益(条件1・2):本業が縮んでいない会社に限定する。減収減益が続く会社は、いずれ配当の原資が細る
- 営業利益率(条件3・4):稼ぐ力が薄い会社を外す。過去5年と今期予想の両方で見て、足元で利益率が崩れていないかも確認する
- 予想配当利回り(条件5):高配当の入り口。ただし利回りの高さだけで選ばないために、ここは欲張らず3%に置いている
- 配当性向(条件6):利益に対して配当を出しすぎていないか。無理な配当は減配リスクになる
- 自己資本比率(条件7):財務の体力。下落局面でも踏ん張れる会社に絞る
- 売上・営業利益の成長率(条件8・9):10年単位で見て、ちゃんと伸びてきたか
- 連続増配年数(条件10):配当を増やし続けてきた実績
条件10の連続増配年数は、別途自分で目視確認しているわけではなく、スカウターのスクリーニング条件として直接組み込んでいます。連続増配を続けてきた会社という条件を、最初の絞り込みの段階で機械的にかけてしまうやり方です。
入門の5軸を「理想ライン寄り」に締めるとこうなる
ここで、最初に挙げた5軸スクリーニングの記事と、いま公開した実条件を見比べてみます。気づくのは、私の実際の設定が、入門記事で書いた基準より一段厳しいことです。
| 軸 | 入門記事の基準 | 私の実条件 |
|---|---|---|
| 配当利回り | 3.5%以上 | 3%以上 |
| 連続増配・維持 | 5年以上 | 連続4期以上(増配) |
| 配当性向 | 80%以下 | 50%以下 |
| 自己資本比率 | 30%以上 | 40%以上 |
| 売上トレンド | 横ばい以上 | 連続増収4期+10年成長率4%+営業利益率10% |
配当利回りだけは、入門記事の3.5%より私の実条件のほうが緩い3%です。これは意図的で、利回りのハードルを上げると、財務が良い優良銘柄ほど普段は利回りが低いため、候補から漏れてしまうからです。利回りは入り口を広めに取り、代わりに財務と成長の条件で締める、という配分にしています。
それ以外の軸は、入門記事が「最低ライン」だったのに対し、私の実条件は記事の中で「理想ライン」として触れていた水準に近づけています。配当性向は80%以下ではなく50%以下、自己資本比率は30%以上ではなく40%以上、売上トレンドは横ばい以上ではなく連続増収かつ成長率4%以上、という具合です。
入門記事はこれから始める人が間口を広く持てるように緩めの基準で書いていて、この記事は私が実運用で使っている締めた版、という棲み分けになります。どちらが正しいという話ではなく、自分のリスク許容度に合わせて、この2つの間のどこかに自分の基準を置けばいい、と考えています。
条件を絞ると、残るのは十数銘柄だけ
この10条件をすべてかけると、東証の全上場銘柄のうち、該当するのは16銘柄ほどでした(私がスクリーニングを回した時点の数字です)。
参考までに、条件10の連続増配年数を外して9条件だけにすると、該当は23銘柄ほどに増えます。連続増配という1条件を足すだけで、23から16へ7銘柄ほど絞られる計算です。それだけ、増収増益で財務も良く、なおかつ配当を増やし続けている会社というのは限られている、ということです。
数千ある上場銘柄が十数銘柄まで絞られるのを見ると、最初は「厳しすぎるのでは」と感じるかもしれません。私はむしろ、これくらい絞れて安心しています。高配当株投資は選ぶ力より選ばない力が効く投資だと考えていて、条件で機械的にふるい落とせる部分は、最初の段階で落としきってしまうほうが、後の判断が楽になるからです。
残った十数銘柄は、そのまま全部買うわけではありません。ここからが人間の出番で、業種の偏り、いまの株価が目安利回りに達しているか、直近のニュースに懸念がないか、といった点を見て、実際に買う銘柄を絞っていきます。絞り込んだ銘柄を実際にどう買い増していくかは、ワン株でコツコツ買う運用の記事にまとめています。
スクリーニングを通った銘柄を、どう受け止めるか
過去に、このスクリーニングを通って「良い高配当株に出会えた」と感じた銘柄はいくつかあります。たとえばDTS(9682)やデイトナ(7228)は、買った当時、条件を満たして候補に上がってきたときに、これは拾えてよかったと思った銘柄でした。
ここで強調しておきたいのは、これはあくまで私が買った当時にそう感じた、という過去の話だということです。いま同じ銘柄が買いかどうかは、また別の判断になります。スクリーニングは「過去にこういう条件を満たした銘柄がこれだった」という記録であって、「いま買うべき銘柄」のリストではありません。銘柄名を挙げているのは、こういう条件設定だとこういう顔ぶれが上がってくる、という実例として見てもらうためで、特定銘柄の購入を勧めるものではありません。
スクリーニングを通った銘柄を見るときの私の姿勢は、「条件を満たした候補が見つかった、ではここから個別に調べよう」という起点として扱う、というものです。スクリーナーが出した結果を、そのまま買い注文に直結させることはしません。
10年スクリーニングの限界 — 過去しか見ていない
便利な10年スクリーニングですが、構造的な限界が一つあります。見ているのが過去の実績だけ、という点です。
10年スクリーニングが評価しているのは、連続増収年数も成長率も連続増配年数も、すべて過去に確定した実績です。現在進行形の業績がどうなっているか、来期以降の配当や売上がどう見込まれているか、足元でどんなニュースが出ているかは、この機能だけでは何も教えてくれません。極端に言えば、過去10年は完璧でも、直近の四半期で業績が急変している会社を、過去の優等生として拾ってしまう可能性があります。
過去の数字に飛びつく危うさについては、増配率の数字だけで判断して失敗しかけた話で具体例を書きました。連続増配や高い増配率という過去の実績が、必ずしも将来の安泰を保証しないという話です。スクリーニングの数字は、その典型的な「過去の実績」そのものなので、同じ落とし穴がここにもあります。
だから私の中では、10年スクリーニングでの銘柄選出は終点ではなく起点です。スクリーニングで残った銘柄について、現在の業績、来期の会社予想、配当方針、直近のニュースを自分で追加で仕入れて、ようやく買うかどうかの判断に入ります。スクリーニングは、その追加調査をする対象を、数千から十数銘柄に絞ってくれる道具だと割り切っています。道具に判断を肩代わりさせない、というのが、過去データ型のスクリーナーと付き合ううえでいちばん大事なところだと考えています。
まとめ — 条件は公開できる、でも判断は手元に残る
私が銘柄スカウターの10年スクリーニングで使っている10条件を、設定値ごと公開しました。連続増収・連続増益、営業利益率、配当利回り、配当性向、自己資本比率、売上と営業利益の成長率、連続増配年数。これらを組み合わせると、入門記事の基準より一段厳しい理想ライン寄りの絞り込みになり、残るのは十数銘柄でした。
ただ、条件は公開できても、最後の判断は手元に残ります。スクリーニングが見ているのは過去だけなので、残った銘柄を起点に、現在と未来を自分で調べる工程が必ず要ります。スクリーニングは候補を絞る道具であって、買う銘柄を決める道具ではない。この線引きさえ守れば、10年スクリーニングは銘柄選びの強力な土台になります。
読者の方が次にやるとすれば、自分なりの条件を一つ決めて、マイスクリーニングに保存してみることだと思います。私の10条件をそのまま入れる必要はありません。利回りを少し上げる、自己資本比率を下げる、連続増配の条件を外す。自分のリスク許容度に合わせて、いじってみてください。保存しておけば、来月からは呼び出すだけで点検が回り始めます。
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この記事で紹介した10年スクリーニングは、マネックス証券の口座を持っていれば無料で使えます。連続増収年数や10年の成長率といった時間軸を持った条件で絞れるスクリーナーは、高配当株を長期で選ぶときの土台になります。気になる方は、実際の条件設定画面を自分の目で触って、自分の基準を組み立ててみてください(口座開設・口座維持は無料)。