はじめに:証券会社選びで止まってしまう人へ
高配当株を始めようと思って情報を集めると、たいてい最初の関門が「で、どこの証券会社で口座を開けばいいのか」です。SBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券。どれも手数料が安く、機能も似ているように見えて、決め手がわからない。私もそうでした。
私はいま、高配当株投資のメイン口座としてマネックス証券を使っています。ただ、最初から「ここが一番いい」と選んだわけではありませんでした。口座を開いたのは十数年前で、当時はそもそも比較できるほど選択肢がなかった、というのが正直なところです。そこから何度も遠回りをして、いまは高配当株中心の運用に落ち着いています。
この記事は、特定の証券会社を勧めるものではありません。会社員投資家の私が、どういう経緯でマネックスに口座を開き、何度か他社への乗り換えを考えながらも結局使い続けているのか、その理由を実際に使っている機能と不満点の両面から書いた体験記です。証券会社選びで止まっている方が、自分の判断材料を一つ増やすくらいの感覚で読んでもらえればと思います。
なぜマネックスだったのか — 消去法から始まった口座選び
投資そのものに興味を持ったきっかけは、2011年でした。東日本大震災のあった年です。親戚が、震災による大きな下落の直前にたまたま持ち株を売り抜けていて、結果的に損失を回避できた、という話を聞いたのがはじまりでした。相場が動くと自分の資産も動く、という当たり前のことを、そのとき初めて自分ごととして意識しました。
そこから証券口座を開こうと調べ始めたのですが、当時はスマートフォンが普及し始めたばかりの時期でした。スマホのアプリで株の取引ができる証券会社というのが、私の見た範囲ではマネックス証券くらいしかなかったのです。パソコンとスマホの両方から取引できるという点で、ほぼ消去法的にマネックスを選びました。「各社を比較して一番を選んだ」という格好いい話ではなく、「スマホでも触れるのがここだったから」という理由です。
いま振り返ると、この最初の入り口が、その後ずっとメイン口座として使い続けるきっかけになりました。証券口座は一度作ると、保有銘柄や取引履歴がそこに溜まっていくので、なんとなく動かしづらくなる側面があります。最初にどこを選ぶかは、思っているより長く影響します。
高配当株にたどり着くまでの遠回り
口座は早く作ったものの、最初の数年はうまくいきませんでした。お金の知識がほとんどないまま始めたので、いま思えば典型的な失敗をひと通りやっています。
値動きが気になって短期で売ったり買ったりを繰り返す。NISAの口座は作ったものの、何を入れればいいのかわからない。米国株が気になったけれど、インデックス投資という考え方自体を知らなかったので、手数料の高いアクティブ型の投資信託を買ってしまう。株主優待が魅力的に見えて、優待目当てで銘柄を選ぶ。どれも、それ単体では悪いわけではないのですが、軸がないまま手を出していたので、当然ながら成果にはつながりませんでした。
転機は2020年、コロナショックの頃でした。高配当株投資を体系的に解説している発信に出会い、「これなら自分にもやれそうだ」と感じて本格的に着手しました。ちょうど相場全体が大きく下げていた時期で、優良企業の株価も軒並み下がっていました。私はその局面で、オリックスなどを比較的安く拾うことができました。
これは結果論ですが、いま振り返ると、高配当株投資の本質を最初の一手で体験できたのは大きかったと思います。高配当株は、買ったときの利回りがその後の長期のインカムを決めます。優良銘柄が高い利回りで買える場面は、市場全体が悲観に傾く下落局面にしか訪れません。暴落こそ仕込み時、という感覚は、このコロナショックでの経験から体に入りました。このあたりの考え方は暴落を仕込み時に変えるマインドセットの記事に詳しく書いています。
高配当株中心に切り替えてからは、銘柄選びの土台としてマネックスの銘柄スカウターを使うようになりました。EPS(1株利益)が継続的に伸びているか、売上が伸びているか、自己資本比率が一定以上あるか、といった条件で候補を絞り、選び出した銘柄を買っていく。途中から始まったワン株(単元未満株)の仕組みを使って、少額のうちは5〜10銘柄に分散しながら、徐々に高配当株を積み増していきました。
一番よく開くのは、銘柄分析ツールではなくマネックスビュー
マネックスで主に使っている機能を3つ挙げるとしたら、マネックスビュー、銘柄スカウター、ワン株です。このうち私が一番開いているのは、銘柄分析ツールではなく、マネックスビューという資産管理の画面です。
マネックスビューは、自分の保有資産を資産クラス別に可視化してくれる機能です。先進国株式、国内株式、債券、リート、コモディティといったアセットクラスごとに、いまの配分が何パーセントなのか、そして月次・年次でどう推移してきたのかを、積み上げの棒グラフで見せてくれます。
私がこの画面を気に入っているのは、アセットアロケーション(資産配分)の偏りが一目でわかるところです。高配当株中心に積み増していくと、どうしても国内株式や特定セクターに偏っていきます。その偏りを数字とグラフで定期的に確認できるので、「いまは国内株に寄りすぎているな」「現金比率が下がってきたな」といった全体感を持ちながら運用できます。本当によく作られていると思います。
高配当株投資では、個別銘柄の分析につい意識が向きがちですが、ポートフォリオ全体の配分を俯瞰する視点も同じくらい大事です。マネックスビューは、その俯瞰を手間なくやらせてくれる点で、私にとっては地味ですが一番使う機能になっています。
銘柄探しの土台になっている銘柄スカウター
2つ目の銘柄スカウターは、高配当株の銘柄選びで欠かせない存在になっています。配当利回り、配当性向、自己資本比率、過去5〜10年の業績推移といった、銘柄を選ぶうえで見たい数字を、銘柄コードを入れるだけで一覧で確認できます。
私の使い方は、毎日張り付くようなものではありません。月に1回ほど、保有している銘柄や候補リストをスカウターで点検し、財務の状態や配当の継続性を確認する、という頻度です。高配当株中心に切り替えてからは、短期で売買を繰り返すことはほぼなくなりました。基本は長期保有で、売るのはよほどの悪材料が出たときか、株価が上がりすぎて高配当株とは言えなくなったとき、このどちらかだけです。
スカウターには、過去10年の業績データを使ってスクリーニングできる機能もあります。私は連続増収・連続増益の年数、営業利益率、配当利回り、配当性向、自己資本比率、連続増配年数といった条件を組み合わせて、自分の基準に合う銘柄を絞り込んでいます。具体的にどんな条件設定をしているか、そして既存の5軸スクリーニングの記事で書いた入門的な基準とどう違うのかは、銘柄スカウターの10年スクリーニングを公開した記事で実際の画面の条件とともに詳しく扱っています。
スカウターには本当にお世話になっていますが、万能ではありません。最大の限界は、見ているのが過去の実績だという点です。10年スクリーニングで残った銘柄は、あくまで過去の数字が良かった銘柄であって、現在の業績や将来の配当・売上の見通し、足元のニュースまでは教えてくれません。スクリーニングは銘柄探しの起点であって終点ではない、というのが私の理解です。スクリーニングを通った銘柄を鵜呑みにする危うさについては、増配率の数字に飛びついて失敗しかけた話でも触れています。
ワン株で少額から分散する
3つ目はワン株です。マネックスのワン株は、単元(通常100株)に満たない数量、つまり1株単位で株を買える仕組みです。
私がワン株を使う理由は2つあります。1つは、ワン株の買付なら売買手数料がかからないこと。もう1つは、少額でも複数の銘柄に分散できることです。高配当株を始めた当初は、まとまった資金があったわけではないので、1株ずつ買い増せるワン株は、少ない資金で分散したい時期に相性がよかったのです。
ただし、ワン株を「毎月決まった額を機械的に積み立てる」使い方はしていません。高配当株投資において、利回りを気にせず毎月同じ額を買い続けるドルコスト平均法的な運用には、私は否定的な立場です。買い値の利回りが長期のインカムを決める以上、利回りが低い局面でもルーティンで買い続けるのは合理性が薄いと考えているからです。ワン株での買い増しは、あくまで目安利回りに達した割安な銘柄に限って定期的に拾う、という運用にしています。割安かどうかのフィルタを先に通したうえで時間分散している、という点が、無差別な積立とは決定的に違うところです。このあたりの考え方は目安利回りで買うタイミングを設計する記事に通じます。
ワン株での買い増しを続けた結果、いくつかの銘柄は単元(100株)まで到達しました。買い増しの制約や、単元化までの実際の流れは、ワン株でのコツコツ買い増し運用をまとめた記事で詳しく書いています。ワン株にも不便な点はあって、たとえば指値ができず、約定は寄付のタイミングに限られます。少額から始める手段としては優秀ですが、万能ではないことは知っておいて損はありません。
不満もある — 単元株の売買手数料と、楽天経済圏
ここまで使っている機能を書いてきましたが、マネックスに不満がないわけではありません。何度か他社への乗り換えを考えたこともあります。正直に書いておきます。
一番引っかかっているのは、単元株(100株単位)の売買に手数料がかかる点です。近年は売買手数料を基本無料にしているネット証券もあり、その点だけを見ると見劣りします。ワン株の買付は手数料がかからないのですが、単元でまとまった株数を売買するときには手数料が発生するので、「ここが無料だったら」と思う場面はあります。売買手数料が基本無料の楽天証券などに移したくなる瞬間は、正直なところ何度かありました。
もう一つ、他社で羨ましいと感じているのが、楽天証券の楽天経済圏との連動です。楽天カードや楽天キャッシュを使った積立でポイントが貯まる仕組みは、普段から楽天のサービスを使っている人にとっては魅力的です。私自身、楽天証券もサブの口座として実際に使っているので、メインのマネックスとサブの楽天を、それぞれ使いながら比較できる立場にいます。ポイント還元という一点だけを取れば、楽天経済圏の作り込みは確かに強いと感じます。
それでも、メイン口座をマネックスから動かさずにいる理由は、ここまで書いてきた機能に行き着きます。資産配分を俯瞰できるマネックスビュー、銘柄選びの土台になっている銘柄スカウター、そして十数年使い続けて手に馴染んだ操作感。この3つがあるので、不満を抱えながらも結局メインのまま使い続けてしまう、というのが正直なところです。完璧な証券会社ではないけれど、自分の運用スタイルに必要な道具が揃っている、という感覚に近いです。
投資スタイル別に見た向き不向き
最後に、これからマネックスを検討する人に向けて、私の実感ベースで向き不向きを整理しておきます。あくまで私が使った範囲での感想で、使っていない機能については正直に「わからない」と書きます。
| 投資スタイル | 私の実感 | 補足 |
|---|---|---|
| 高配当株でコツコツ | 向いていると思う | 銘柄スカウターの10年スクリーニングとワン株の組み合わせが効く |
| 米国株がメイン | 向いていると思う | 取り扱い・ツールともに使いやすい |
| IPO狙い | 評価できない | 私はIPOに参加していないので、判断できる材料がない |
| iDeCo中心 | 評価できない | マネックスのiDeCoは使っていないので、語れない |
| 短期売買・デイトレ | 向いていないと思う | 単元の売買手数料がかかる点が、回転売買とは相性が悪い |
IPOとiDeCoについては、無理に評価しようとすると嘘になるので、使っていないからわからない、とそのまま書いておきます。証券会社の紹介記事では全方位を褒めがちですが、自分が触っていない機能まで持ち上げるのは誠実ではないと考えています。
私自身がマネックスを使い続けている根っこの理由は、繰り返しになりますが、マネックスビューと銘柄スカウターという2つのツール、そして長年使ってきたことによる操作の手馴染みです。高配当株をコツコツ積み上げていくスタイルとは、相性がいいと感じています。
まとめ — 道具は「自分の手に馴染むか」で選ぶ
証券会社選びは、スペック表を並べて一番を決める作業のように見えて、実際には「自分の運用スタイルにどの道具が馴染むか」を確かめる作業に近いと、いまは思っています。
私の場合、入り口は消去法でした。そこから何度も遠回りをして、高配当株という軸が定まり、その軸に合う道具としてマネックスビュー・銘柄スカウター・ワン株が手元に残った、という順番です。最初から完璧な比較をして選んだわけではありません。使いながら、自分に必要な機能とそうでない機能が分かれていった、というのが実際のところです。
これから口座を開く方は、まだネット証券を持っていないなら、まずは一つ口座を作って、実際にツールを自分の目で触ってみるのがいいと思います。スクリーニングの画面、資産配分の見え方、注文のしやすさ。こうしたものは、人によって合う合わないがあります。私が良いと感じた機能が、あなたにとっても良いとは限りません。NISA口座であればマネックスでも売買手数料はかからないので、まずは少額で触ってみて、自分の手に馴染むかどうかを確かめてみてください。
連続増配や財務の見方など、銘柄選びそのものの基礎を固めたい方は、高配当株投資の始め方をまとめた記事から読み始めると、この記事の内容ともつながると思います。
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この記事はマネックス証券3本連載のハブです。続きの2本もあわせてどうぞ。
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この記事で書いた銘柄スカウターやマネックスビューは、口座を持っていれば無料で触れます。配当性向・自己資本比率・過去の業績推移を銘柄コードだけで確認できる環境を一つ持っておくと、銘柄選びの手間がかなり変わります。気になる方は、実際の画面を自分の目で触って、自分の運用に合うかどうか確かめてみてください(口座開設・口座維持は無料)。